モラハラ被害者が加害者のもとへ戻る時|支える家族の接し方

モラハラ被害に遭った娘さんが、加害者のもとへ戻ろうとしてしまい、どう接すればいいか悩んでいるご家族へ。

  • 「あんなにひどい目に遭ったのに、なぜ戻ろうとするの?」
  • 「嫌になって別居したのに、なぜ迷うの?」
  • 「昨日は離婚すると言っていたのに、なぜ、真逆のことを言うの?」

娘の発言が理解できず、苦しくなる。
それでも、本人が苦しんでいる姿を見ると、放っておけない。

また、次のようにも思う。

  • 娘には幸せになってほしい
  • 不幸になってほしくない
  • 私のようになってほしくない

これらの葛藤の中で、いたたまれない気持ちになる方も多いのではないでしょうか?

ですが、モラハラ被害による心の傷の回復は、一筋縄ではいきません。
気持ちが安定せず、良い日と悪い日を繰り返します。
それは、同じ失敗を繰り返しているのではなく、回復の途中で起きる、心の揺れです。
回復するまでには、かなりの時間がかかります。

今回は、相談員として多くのケースに関わってきた立場から、次の3点を中心に説明していきます。

  • モラハラ被害者の心が揺れ続ける理由
  • 戻ろうとする本人への接し方
  • 支える人が長く付き合っていくための考え方

もくじ

  1. 心が揺れるのは意志が弱いからではない
  2. 加害者からの反省の連絡が心を動かす
  3. 別居して気づいた本音が戻る気持ちを後押しする
  4. 「戻る条件」を考えるのは心を守るため
  5. 寄り添うことと同意することは違う
  6. 結論を急かさなくていい
  7. 何度戻っても失敗ではない
  8. 完璧に支えなくていい
  9. 姉を3年間支え続けた方のケース
  10. 無理なく支え続けるために境界線を引く
  11. まとめ

心が揺れるのは意志が弱いからではない

  • 「なぜ昨日言ったことを忘れるの?」
  • 「なぜ同じことを繰り返すの?」
  • 「何を考えているのか、まったく分からない」

モラハラ被害に遭った娘さんが、夫のもとに戻ろうとする姿を見ると、このように感じてしまう方も多いのではないでしょうか?
その不安や苛立ちは、本人のことを心配しているからこそ出てくる思いです。
しかし、心が揺れるのは、意志が弱いからでも、失敗から学べていないからでもありません。

たとえモラハラの関係であっても、お互いが過ごした時間の中には、良い記憶もあります。
優しくされた瞬間、楽しかった思い出、家族としての時間。
それと同時に、否定された言葉、恐怖を感じた瞬間といった、つらい記憶もあります。
この両方の記憶が、被害者の中にあります。
気分が安定している時は、良い記憶が思い出され「やっぱり戻れるかも」という気持ちが強くなります。
逆に、つらい記憶がよみがえる時は「絶対に無理」という気持ちが強くなります。
これは、誰にでも起こり得ることです。
本人も、この心の揺れに一番戸惑っていると思います。
ですので、まずは「心が揺れるのは、しょうがないことなんだ」と理解を示してあげてくださいね。

加害者からの反省の連絡が心を動かす

「娘は、まだ戻ることを考えているの?」
そう感じて、理解に苦しむ方も多いのではないでしょうか?

でも、被害者が加害者のもとに戻りたいと考えるのには、理由があります。
その一つが、加害者からの反省の連絡です。
こうした連絡は、ロミオメールとも呼ばれています。
ロミオメールとは、別居した後に加害者から届く、謝罪や愛情を伝える連絡のことです。

モラハラ加害者の特徴として、別居の当初は、次のように強気で攻撃的な態度を取ります。

  • いつになったら帰るんだ?
  • 電話くらい出ろ
  • 話し合いから逃げるなよ

ですが、別居が長期化すると、次のような反省した文面に変わります。

  • 君のことを傷つけて申し訳ないと思っている
  • 君の大切さが、やっとわかった
  • 俺がバカだった、許してくれ

などの内容です。
これらは、同居中には夫から一切聞かれなかった反省の言葉です。
そのため、その文章を真に受けてしまいます。

その上で、娘さんは

  • 少しは心を入れ替えたのかも
  • 改心できそうかも
  • これならやり直せるかもしれない

という解釈をし、復縁に対して前向きに考え始めることが、よく見られます。
ですので、反省の連絡に気持ちが動くのは自然なことだと受け止めて、寄り添ってあげてくださいね。

別居して気づいた本音が戻る気持ちを後押しする

  • 「なぜ、あんな夫のもとに戻るの?」
  • 「なぜ、わざわざ茨の道を選ぶの?」

そう感じるのは、当然だと思います。
真剣に寄り添ってきたからこそ、落胆も大きいのではないでしょうか?

ですが「夫のもとに戻る」という選択は、別居してみて、本人の中で率直に出た感情や本音とも言えます。

具体例でいうと

  • 夫と離れたことで、一人は寂しいということに気付いた
  • 生活水準が下がったと痛感した
  • あんな夫でも私には必要だと思えた

ですので、戻る選択を責めるのではなく、本人の本音が出たものとして受け止めてあげてくださいね。

「戻る条件」を考えるのは心を守るため

  • 「もう、その人のことは忘れて、前を向いてほしい」
  • 「戻ったら、またひどい目に遭うからやめなさい」

娘さんが「戻る条件」について何度も話すたびに、このように言いたくなる方も多いのではないでしょうか?

加害者のもとに戻りたいと何度も話すケース

ある母親は、娘さんが加害者の夫と「戻る条件」について何度も話すことに、疲れ果てていました。
同じように伝えても、娘さんはまた、同じ話を繰り返します。

面談の中で「娘さんが戻る条件を考えている時、どんな表情をしていますか?」とお聞きすると、その方は「必死な顔をしています」と答えました。
本人にとって、条件を考える時間は、混乱した状況の中で、自分の力でコントロールできる、唯一の手段だったのかもしれません。
それを頭ごなしに否定すると、本人はさらに孤独を感じてしまうことがあります。
ですので「どうして?」と責めるのではなく、本人の気持ちに寄り添ってあげてくださいね。

寄り添うことと同意することは違う

「娘に寄り添うと、復縁に同意したと思われるのでは?」

その思いから、なかなか娘さんの話に寄り添えない方もおられると思います。
でも、寄り添うことと「戻ることに同意する」ことは、まったく違います。

本人の気持ちに寄り添うというのは「良い記憶とつらい記憶の間で、気持ちが揺れているんだな」と心の動きを分かってあげることです。
戻るという判断を認めることとは、別の話です。

支援をしている立場から言うと、モラハラ夫の加害性は専門的な支援を受けずに治ることは、まずありません。

モラハラ夫は、同居が再開されると、数か月は反省したふりをしますが、慣れてくると、またモラハラが再発することがほとんどです。

ですので、親心で娘さんのことを案じて言いたくなる気持ちは大いに理解できます。
ですが、強引に押し付けたり、説教したりはしないでください。
これが、被害者とご家族、両方の心を守るためのバランスです。

結論を急かさなくていい

  • 「今後のことを早く決めてほしい」
  • 「毎日、振り回されるのがしんどい」

そう思ってしまうのは、本人のことを心配しているからこそだと思います。
でも、結論を急かされると、本人は焦ってしまいます。
焦るほど、冷静な判断はできなくなります。
加えて、結論が出ないのは、何も考えていないからではありません。
本人なりに、少しずつ現実と向き合い、葛藤しているからこそ結論が出ないのです。
ですので、まずは結論が出るのを待ちましょう。

何度戻っても失敗ではない

「どうせ戻っても、また同じ目に遭って、実家に戻ってくるのに」

せっかく別居までして離婚の話を進めていたなら、この選択は失敗に見えると思います。
親御さんの立場からすると、また被害を受けて実家に戻ってくるという予想は、大方、当たっていると思います。

ただ、渦中の本人だけは、夫に対してわずかながらの希望を頼りに復縁しようとします。
結論から言うと、渦中の本人に何を助言しても、聞く耳を持たない状態だと思います。
要は、自分で体験しないと分からない。
言葉を選ばずに言うと、自分で頭を打たないと分からない、痛い目に遭わないと分からない状態です。
ですが、本人が自分で気づいていく過程なので、何度戻っても失敗ではありません。
こういう経験を経て、人というのは自己成長していく生き物だと思います。

恐らくですが、あなた自身もこのような経験を経て、人生の酸いも甘いも味わって、今があるのではないでしょうか?

また、娘さんも、一人の大人であり、社会人でもあり、母親であるケースもあります。
ですので、本人の意見を尊重するという姿勢も大切だと思います。

ただし、夫からの身体的DVがあるなど命の危険に該当する場合は、全力で止めるべきだと思います。

また、なぜ被害者が、別居をしても加害者のもとへ戻ってしまうのか。
その背景を、さらに詳しく知りたい方は、こちらもご覧くださいね。

完璧に支えなくていい

  • 「娘をちゃんと支えてあげないと」
  • 「ちゃんと寄り添ってあげないと」
  • 「支えてあげられるのは私しかいない」

しっかり支えようとする親御さんほど、それが負担になるケースが多いと思います。
また、娘さんを大切に思うからこそ完璧にしようとして、そうできないご自身を責めてしまうこともあると思います。

しかし、人を完璧に支え続けるということは、かなりの労力を要します。

例えば、このようなことはないでしょうか?

  • 夫のもとに戻る話を聞いて「えっ、また?」と言ってしまった
  • 疲れていたので電話に出なかった
  • 「何で戻るの?」と強く言ってしまった

これらは、ご自身の思いが衝動的に出てしまった発言や行動だと思います。
このような発言や行動の後で、後悔されることもあると思います。
ですが、そんな日は、必要以上にご自身を責めずにゆっくり休んでいただきたいと思います。

そして、次の機会に

  • 「この前は、きつい言い方をしてごめんね」
  • 「疲れていたので電話に出られなかった」

と一言伝えれば十分です。

また、娘さんを支えることも大事ですが、何よりも大切なのは、あなた自身の体調です。
毎日、長電話に付き合ったり、ご自身の時間を犠牲にしたりすると、あなた自身の生活が立ち行かなくなります。

ご家族が無理なく休むための距離の取り方は「モラハラ被害者を支える家族の疲れ|限界のサインと距離の取り方」で、詳しくお伝えしています。

姉を3年間支え続けた方のケース

Aさんは、モラハラ被害を受けている姉を、3年間支え続けていました。
その間、姉は、夫のもとに戻っては離れるということを経験しました。

「せっかく夫と離れていたのに自ら戻り、また悩んで連絡が来る。私の方が疲れ果てて、何もかも投げ出したくなった時期もありました」
そう振り返っていました。

以前、Aさんの母親が「彼とは離れなさい」と強く言ったことで、姉はAさん家族と疎遠になってしまったそうです。

そのため、自分が指摘してしまうと、また姉から縁を切られるのではないかと不安だったといいます。

ですので、自分の時間を犠牲にしてでも、姉の対応をしていたそうです。
ですが、やがて限界が訪れます。

そこで、姉に素直に話しました。
「お姉ちゃんがつらいのは理解している。でも、私も自分の時間を犠牲にするのはしんどい」
そして、自分が出来ることと出来ないことを明確にして、提案しました。
すると、Aさんは少しずつ自分の生活を取り戻しました。
姉の状態に一喜一憂しないよう、一定の距離を持って関われるようになったそうです。

「完璧に支えることは、私にはできないと分かってから、逆に、気持ちが楽になりました」
今では、姉はモラハラ夫のもとを離れ、少しずつ新しい生活を築き始めているそうです。

リジェネには、ご本人だけでなく、大切な人を支えているご家族からの相談も寄せられています。
詳しくは、記事の一番下にある、LINEのお友達登録から、無料相談をご活用ください。

無理なく支え続けるために境界線を引く

ここでは、モラハラ被害者の方を支えるご家族が今日から始められる実践的な方法を説明します。
現状は、サポート疲れの状態にあると思いますので、まずは、心身ともに回復が必要な段階です。

そのためには、ご自身が被害者の方に対して、何が出来て何が出来ないかを明確にする必要があります。
これは、被害者の方とあなたとの間に境界線(バウンダリー)を引くという作業でもあります。
バウンダリーについて詳しくは、こちらをご覧くださいね。
ただ、これらは頭の中で整理しようとしても難しいので、紙に書き出して整理する方法をおすすめします。

まず、ノートとペンを用意してください。
ノートのサイズはA4やB5がおすすめです。
また、書いているところを見られるのが嫌だという方は、ルーズリーフやメモ帳などでも構いません。
スマホのメモではなく、紙に書くのがポイントです。

①悩んでいることを書き出す

ちなみに、このノートは人に見せるものではないので、思うことを押さえ込まず正直に書いてください。

例えば

  • 毎日、電話をされるのがしんどい
  • 夜中に電話されるのがしんどい
  • 急に呼び出されるのが嫌だ
  • 急に家に来られるのが面倒だ
  • 使いっ走りのように頼み事をされるのが疲れる
  • 泣いてばかりで、どう接したらいいかわからない
  • 子どもの面倒を見させられるのが嫌だ
  • 電話に出ないと鬼電話をされるのが嫌だ
  • 同じ話ばかりされて疲れる

②出来ることと出来ないことに振り分ける

例えば

出来ること

  • 子どもの面倒を見させられる
  • 急に家に来られる
  • 同じ話ばかりされて疲れる

出来ないこと

  • 夜中に電話される
  • 急に呼び出される
  • 鬼電話をされる

この振り分けをするのに、かなり抵抗があったり、罪悪感を抱かれたりする方もおられると思います。

「私が出来ないと言ったら、娘は対応できるのか?大丈夫なのか?」なども頭によぎると思います。
ですが、ここでは、それらは横に置いておいて、自身の本音に忠実に、冷静に、淡々と振り分けてみてください。

③伝え方を考える

振り分けられたら、次は、どうやって娘さんに伝えるかの段階です。
これは、実際にロールプレイ(ロープレ)をされることが一番よいと思います。
ちなみに、ロープレとは、ざっくり言うと、実際の場面を想定し、事前に練習したり対処法を考えることです。
カウンセリングや営業などでも、よく使われます。

  • まず、電話や対面で伝える場面を想定する
  • これらを伝えたら、娘さんがどんな反応をするかを想定する
  • その上で、受け入れられそうな条件に修正する

これらは、要は交渉と同じです。
例えば、今まで娘さんに対して、自分の意思を伝えてこなかった献身的な母親だとします。
その母親が、いきなり次のように言ったとします。

  • 「今日から、必要な時以外は一切電話をしないで」
  • 「あなたはすぐに泣くから、お母さんは困っている」
  • 「私はあなたの召し使いではない」

すると娘さんは「お母さんが突然キレた」「突き放された」と受け取って、心を閉ざしてしまいます。
場合によっては、すぐにモラハラ夫のもとに帰ると言い出しかねません。
ですので、娘さんの反応を想定して、どこまでなら歩み寄れるかというラインも、決めておく必要があります。

また、この交渉の最初に、娘さんへの思いを伝えると、聞く耳を持ってもらいやすいとも思います。

例えば、

  • あなたに対してはできる限りのことはしてあげたいと思っている
  • あなたには幸せになってほしいと思っている
  • あなたのことは大切だと思っている

などです。

これらを伝えた上で、次に、体の不調などがある場合は、それも伝えます。

具体的には

  • 「お母さんは最近、体調が良くないの」
  • 「あまり眠れないの」
  • 「頭痛やめまいが強いの」

などです。

次に、先ほどの、出来ないことリストをもとに、娘さんに改善してほしいポイントを伝えます。

具体的には、次の言い方を参考にしてください。

  • 夜中に電話される
    → 「眠れないので、急用以外は日中に連絡してほしい」
  • 急に呼び出される
    → 「家事をこなさないといけないので、急用以外は対応が難しい」
  • 鬼電話をされる
    → 「何かあったのかとびっくりするから、急用以外はやめてほしい」

これらは具体例ですので、娘さんに伝わりやすい言葉に言い換えることをおすすめします。
その上で、今後のサポートについて話し合うことも、サポートを長く続ける上では必要です。

無理なく出来そうなことから始めてくださいね。

まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございました。
被害者が加害者のもとに戻ろうとするのは、意志が弱いからではありません。
良い記憶とつらい記憶の間で揺れていることや、加害者からの反省の連絡、別居して気づいた本音が、気持ちを動かしています。
結論を急かさず、否定も賛成もせずに、まずは本人の気持ちに寄り添ってあげてください。

そして、完璧に支えなくていいのです。
ご自身の体調と生活を守りながら、出来ることと出来ないことを分けて、無理なく続けていきましょう。

【この記事を書いた人】

経験と専門性

  • 夫婦でモラハラを解決した実体験者
  • 2015年から2500件超の相談解決実績
  • 行動心理学をベースとしたモラハラ加害者・被害者の心理分析
  • 加害者と被害者の思考・行動パターンの解明と改善指導
  • 発達障害特性を持つ夫婦関係の調整とサポート
  • カサンドラ症候群からの回復支援
  • 夫婦間コミュニケーション改善や改善方法の開発
  • 同じ経験を持つ専門家として、あなたの状況に寄り添うことが可能

メディア掲載実績

新聞・雑誌掲載

  • 週刊文春オンライン(2024年11月 3記事連載)
  • 産経新聞(2021年9月)
  • 神戸新聞 まいどなニュース(2021年3月)
  • 中日新聞 ねぇねぇちょっと特別編(2021年12月)
  • ウレぴあ総研 ハピママ(2023年7月 3記事掲載)

テレビ・ラジオ出演

全国12媒体でモラハラ解決の専門家として紹介

モラハラの問題で苦しんでおられる方々の少しでも力になりたいと思っています。

つらい時の相談先

モラハラによるカサンドラ症候群(不眠・動悸・希死念慮)に該当する場合は、精神科や心療内科を受診し、適切な治療を受けることをお勧めします。

モラハラで苦しんでいるあなたへ

私たち夫婦も、かつては離婚寸前まで追い込まれました。

しかし諦めずに夫婦で協力し、モラハラの問題と真正面から向き合い、解決することができました。

現在は幸せに暮らしています。

すぐに離婚だと諦めないでください。解決への道は必ずあります。

私たちがどのようにして危機を乗り越えたのか、被害者妻と加害者夫の両方の目線でリアルに書いています。

もし「記事は理解できたけれど、うちの場合はどうすればいいのかわからない…」と感じているなら、一人で抱え込まず、ぜひ私たちにお話を聴かせてください。

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