モラハラ被害者に増えてきている「複雑性PTSD」とは

今回は、モラハラ被害者に増えてきている「複雑性PTSD」について説明します。

前回、モラハラ被害者に増えてきている「不安障害」とはについて説明しましたが、今回は、不安障害の中でも、最も症状が長期的に続く、複雑性PTSDについて説明していきます。

この症状もモラハラ被害者に増えており治療が必要なケースも増加しています。

そのため、ご自身の状態を確認するためにも、この記事を参考にしていただければと思います。

この症状も、モラハラ被害を受けている最中に現れることもありますが、離婚後に後遺症として突然発症することもよくあります。

したがって、もしあなたがこれらの症状に該当する場合は、自力で治すのは難しいため、精神科や心療内科で適切な治療を受けることを強くお勧めします。

今回は、複雑性PTSDの全般的な概要や症状、PTSDとの違いなどについて説明していきます。

最後までお読みいただければ幸いです。

この記事はこんな方におすすめです

  • ご自身が複雑性PTSDかを知りたい方
  • モラハラ被害者の方
  • パートナーが複雑性PTSDかを知りたい方

もくじ

  1. 複雑性PTSDとは
  2. PTSDの基本的な症状
  3. 複雑性PTSD特有の症状
  4. 複雑性PTSDは他の疾患と誤診されやすい
  5. 誤診されやすい疾患や状態
  6. 複雑性PTSDの治療について
  7. まとめ

複雑性PTSDとは

複雑性PTSD(CPTSD)は、長期間にわたる虐待や暴力などの繰り返しのトラウマ体験によって引き起こされる感情調節の困難を伴うPTSDの一種です。

この障害は、極端なストレスによる障害とも呼ばれ、2018年にWHOのICD-11で新たな診断名として認定され、2022年から正式に発効されました。

CPTSDの特徴的な症状には、PTSDに共通する「再体験」「回避」「脅威感覚」に加えて、極端なストレス症状である「感情調節の困難」「否定的な自己認知」「対人関係の困難」が含まれます。

これにより、慢性的なトラウマ体験の積み重ねによる複雑な心理的影響が強調されています。

診断基準においては、身体的虐待や性的虐待といった「長期的・反復的な恐怖体験」が主な原因となり、一方で心理的虐待やネグレクトは含まれていません。

また、拷問、強制収容所、奴隷制度、大虐殺などの組織的な暴力もこの「長期的な恐怖体験」として考慮されます。

重要なのは、すべての人がこうしたトラウマ経験によりCPTSDを発症するわけではないという点です。

PTSDの基本的な症状

複雑性PTSD(CPTSD)には、一般的なPTSD症状に加えて、特有の症状があります。

まずは、PTSDに共通する基本的な症状について説明します。

再体験症状(侵入症状)
フラッシュバックと呼ばれる現象で、何かのきっかけで辛い記憶が突然よみがえります。
情景が動画のように鮮明に思い出される場合もあれば、情景が浮かばずとも、当時の感情や身体反応(動悸、息苦しさ、胸の圧迫感)が再生されることもあります。
日常的にフラッシュバックを経験している人の多くが、これがフラッシュバックであることに気づかず、突然具合が悪くなることとして捉えていることが多いです。
回避・麻痺症状
辛い体験を思い起こさせるような場所や状況を避ける、または辛い出来事の記憶自体を封じ込めることがあります。
心を守るため、他人事のように淡々と対応するなどの反応が見られます。
過覚醒症状
小さなことでイライラしやすく、過剰反応を示すことが増えます。
自傷行為や衝動的な行動、驚きやすさ、集中力の低下、悪夢にうなされるなどの症状が典型的です。
認知・気分の陰性変化
「自分には価値がない」「自分がいない方が良い」「すべて自分が悪い」といった否定的な思い込みや信念が深く根付いてしまいます。
また、興味を持てるものがなく、何も楽しく感じられない状態が続きます。

複雑性PTSD特有の症状

複雑性PTSD(CPTSD)の特有な症状は、PTSDに加えて感情や対人関係の機能が著しく損なわれる点です。

感情調節障害
感情のコントロールが難しく、些細なストレスで極端な感情反応を引き起こしたり、感情の麻痺(無感覚)を感じることがあります。
暴力的な爆発、自傷行為、無謀な行動が特徴的で、ストレス時には解離症状も見られます。
否定的自己概念
常に「自分は役に立たない」「価値がない」と感じる自己否定が強く、これが生き方や将来に対する否定的な世界観につながります。
このため、他者との親密な関係を築くことが難しく、孤立感や孤独感が強まります。
対人関係障害
人間関係を築くことや維持することが困難です。
親密な関係を避けたり、短期間で関係が崩れることが多く、他者との信頼関係を保つのが難しいため、依存的になったり、急に関係を断ち切ったりします。
機能障害
CPTSDは、感情や対人関係の障害だけでなく、生活の多くの領域にわたって影響を及ぼします。
職場や家庭での役割を果たすことが困難であり、場合によっては大きな努力を要しても日常生活を維持するのが難しくなることがあります。
例えば、仕事のパフォーマンスが低下したり、育児や学校生活に支障をきたすことがあり、結果的に深い機能障害を引き起こします。

複雑性PTSDは、PTSDの症状に加えて、感情調節や対人関係の障害が顕著に現れます。

虐待やネットでの誹謗中傷、夫からの暴力など、長期的で反復的な恐怖体験を背景にして発症することが多いです。

こうした障害は生活面に大きな影響を及ぼし、治療やサポートが必要です。

複雑性PTSDは他の疾患と誤診されやすい

CPTSD(複雑性PTSD)は、長期的かつ繰り返されるトラウマ体験によって引き起こされる深刻な精神的障害であり、他の精神疾患と誤診されることが多いです。

特に以下のような疾患や症状と混同されがちです。

誤診されやすい疾患や状態

境界性パーソナリティ障害
感情の不安定さや対人関係の困難さがCPTSDと類似しています。
特に自己認識や感情制御の問題が重なることから、しばしば混同されます。
双極性障害
CPTSDでも感情の激しい変動や衝動的な行動が見られるため、双極性障害との区別が難しい場合があります。
ASD(自閉症スペクトラム障害)
CPTSDとASDの両方に対人関係の困難や感情制御の問題が見られます。
これにより、ASDと誤診されることがあります。
ADHD(注意欠如・多動症)
CPTSDの過覚醒症状や集中力の低下は、ADHDの症状と似ているため、誤診のリスクがあります。
うつ病や不安障害
CPTSDには持続的な悲観的な思考や感情麻痺が見られ、これがうつ病や不安障害と混同されることが多いです。
アルコールや各種依存症
 CPTSDに伴う感情のコントロールが困難なため、依存症と誤診されることがあります。
解離性障害
CPTSD患者はストレスに対して解離反応を示すことがあり、これが解離性障害として診断される場合があります。

複雑性PTSDの治療について

複雑性PTSD(CPTSD)の治療は、深い心的外傷や長期的なトラウマ体験から生じるため、単純なものではなく、長期的で多面的なアプローチが求められます。

複雑性PTSDの治療法には、薬物療法、対人関係療法、眼球運動脱感作療法(EMDR)、認知行動療法などの治療法が有効ですが、いずれも、精神科や心療内科での専門的な治療が必要になりますので、該当する方は、早めの通院をお勧めします。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございました。

今回の内容を参考にして頂き、あなたが複雑性PTSDの症状に該当する場合は、重ねてお伝えしますが自力で治すのは難しいため、精神科や心療内科で適切な治療を受けることを強くお勧めします。

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