モラハラ被害者に増えてきている「不安障害」とは

今回は、モラハラ被害者に増えてきている「不安障害」について説明します。

近年、不安障害の症状を訴える方が増えており、治療が必要なケースも増加しています。

そのため、ご自身の状態を確認するためにも、この記事を参考にしていただければと思います。

この症状は、モラハラ被害を受けている最中に現れることもありますが、離婚後に後遺症として突然発症することもよくあります。

したがって、もしあなたがこれらの症状に該当する場合は、自力で治すのは難しいため、精神科や心療内科で適切な治療を受けることを強くお勧めします。

今回は、不安障害の全般的な概要や、どのような人が不安障害になりやすいのかについて説明していきます。

少し長くなりますが、最後までお読みいただければ幸いです。

この記事はこんな方におすすめです

  • ご自身が不安障害か知りたい方
  • モラハラ被害者の方
  • パートナーが不安障害か知りたい方

もくじ

  1. 不安障害とは
  2. 不安障害を発症しやすい人とは
  3. 全般性不安障害の判断基準
  4. パニック障害
  5. 社交不安障害
  6. 強迫性障害
  7. 心的外傷後ストレス障害(PTSD)
  8. 隠れた不安症状を理解しよう
  9. 隠れた不安症状の例
  10. イライラしやすくなった
  11. 攻撃的になった
  12. 確認行為が増えた
  13. 仕事や決断が遅くなった
  14. 原因不明の身体症状が出てきた
  15. 薬・アルコール・過食・自傷行為などへの依存
  16. まとめ

不安障害とは

不安を主な症状とする病気のグループを「不安障害」と呼びます。

これは過度な不安が治療を必要とするさまざまな症状を引き起こす状態を指します。

順番に詳細を説明していきます。

不安障害を発症しやすい人とは

一般的に、男性よりも女性のほうが不安障害を発症しやすいというデータがあります。

また、家族に不安障害を発症した人がいる場合、遺伝する確率は30%〜50%という研究結果もあります。

不安障害になりやすい性格

  • 心配性や神経質や些細なことが気になる
  • 完璧主義で理想が高い
  • 失敗を恐れる
  • 行動を起こす時に不安を感じやすい

さらに、最近注目されているHSP(Highly Sensitive Person、繊細で過敏な人)も、不安を感じやすい傾向があります。

HSPの方は、外部からの刺激に敏感に反応しやすいため、ストレスを溜め込みやすく、他人の言動にも過剰に不安を抱きがちです。

HSPの方は、過剰に不安や恐怖を感じやすいため、不安障害やうつ病、パニック障害を発症するリスクが他の人よりも高いと考えられています。

また、モラハラ被害者の多くは、幼少期に「お前はダメだ」「お前のせいで私は不幸だ」などの否定的な言葉を浴びせられることで、劣等感や無価値感、孤独感を抱えやすくなります。

その結果、他人を信用できず、常に恐怖や不安を感じやすい性格になる傾向があります。

全般性不安障害の判断基準

全般性不安障害かどうかは、DSM–5という判断基準を用いて判断します。

DSMー5

A.多くの出来事や活動(仕事や学校など)について制御が困難と感じる過度な不安や心配が少なくとも6か月以上持続している

B.以下の6つの症状のうち3つ以上を伴っている(子どもの場合は1つ以上)

  1. 落ち着きのなさや緊張感・または神経の高ぶり
  2. 疲れやすくなった
  3. 集中できない・頭が真っ白になる
  4. 怒りっぽくなった
  5. 筋肉が緊張する
  6. 睡眠障害(入眠・断眠・睡眠維持の困難・落ち着かず熟眠感のない睡眠)
  • その不安、心配、または身体症状が、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている
  • その障害は、物質(例:乱用薬物、医薬品、カフェイン、アルコール)または他の医学的疾患(例:甲状腺機能亢進症)の生理学的作用によるものではない
  • その障害は他の精神疾患(うつ病、躁うつ病、統合失調症など)では説明できない

全般性不安障害(全般不安症)の特徴は、特定の恐怖対象がなく、漠然とした不安(浮動性不安)を感じる点です。

全般性不安障害の特徴

  • 「地震が起こったらどうしよう」
  • 「息子が交通事故に遭ったらどうしよう」
  • 「癌になったらどうしよう」
  • 「強盗に入られたらどうしよう」
  • 「私以外、全員死んだらどうしよう」

といった、日常的なことへの過剰な心配が続きます。

この状態は半年以上続き、不安が強まりすぎると、精神的な症状(緊張、イライラ、怒りっぽさ)や、身体症状(肩こり、頭痛、頻脈、発汗)なども見られます。

また、自律神経の過活動による症状や、睡眠障害も起こることがあります。

心配事に対して過剰に注意が向き、そのことが頭から離れず、心配でたまらなくなる傾向があります。

加えて、疲れやすさ、集中力の低下、筋肉の緊張なども見られ、日常生活に支障が出ることがあります。

パニック障害

パニック障害では、突然激しい不安や身体の異常な反応(動悸、発汗、息苦しさ、めまいなど)が発作的に起こり、これを「パニック発作」と呼びます。

発作時には「死んでしまうのではないか」といった強い恐怖を感じることがあり、10分以内に症状がピークに達します。

この発作を繰り返すことで「予期不安」が生じ、「また発作が起きたらどうしよう」という心配から、電車や人混み、一人での外出などを避けるようになることがあります。

社交不安障害

社交不安障害(社会不安障害)は、自分が他人からどう評価されるかに強い不安を感じる状態で「社会恐怖」とも呼ばれます。

この不安は、人と会うことを避けるか、苦しみながら耐える形をとります。

通常の不安とは異なり、繰り返し経験しても慣れることがありません。

社交不安障害には、人との関わり全般に対する不安(全般性)と、特定の状況での不安(非全般性)があります。

特に、人前で恥をかくことを恐れ、人混みや公共の場所に強い苦痛を感じ、時にはパニック発作を起こすこともあります。

思春期に自己評価が低いために発症することもあり、恐怖を抑えられないため、外出や人と会うことを避ける傾向が強まります。

強迫性障害

強迫性障害は、「〜したらどうしよう」「〜するのではないか」という強迫観念にとらわれ、それによって強い不安や苦痛を感じる状態です。

この不安を和らげるために、患者は「強迫行為」を行います。

代表的な行為には「繰り返し手を洗う」「火の元や戸締りを何度も確認する」「数字を数え続ける」といったものがあり、これらは一時的な安心をもたらしますが、すぐに再び不安が襲い、行為を繰り返す必要が生じます。

強迫性障害は、脳の生物学的な要因が原因とされ、抗うつ薬が効果的な治療法の一つです。

また、認知行動療法も併用され、不安が強迫行為を引き起こし、その行為が不安を一時的に和らげるという悪循環を客観的に認識し、儀式的な行動を少しずつ我慢する方法を学びます。

患者は自分でも不合理だと分かっていながら、行為を止められず、日常生活や学校生活に支障が出ることが多いです。

心的外傷後ストレス障害(PTSD)

心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、トラウマとなる出来事を経験した後に発生する精神的な障害です。

主な症状は以下の3つに分けられます。

PTSDの症状

  1. 持続的なよみがえり
    トラウマの記憶がフラッシュバックや悪夢として頻繁に再現され、その出来事を再び経験しているかのように感じます。
  2. 回避と麻痺
    トラウマを思い出させる状況や場所、人を避ける行動が見られ、感情的な麻痺や他者との疎遠感、愛情を感じにくくなることもあります。
  3. 持続的な覚醒亢進
    常に緊張状態にあり、不眠、怒りっぽさ、集中困難、過度の警戒心、驚きやすさなどの症状が続きます。

PTSDは、極端なストレスやトラウマ体験(自然災害、暴力、事故、性的暴力など)をきっかけに発症し、これらの症状が1ヶ月以上続くと診断されます。

自然災害の被災者では約10%、性的暴力被害者では約40%がPTSDを発症すると報告されています。

また、幼少期の虐待やネグレクトなど、長期的で反復的なトラウマを経験すると、複雑性PTSDが発症することがあります。

PTSDは決して珍しい病気ではなく、日本のデータによれば、人生でトラウマを経験する確率は約60%、PTSDの生涯有病率は1.3%です。

子供もPTSDを発症することがあり、大人と同様にトラウマ体験後に症状が現れますが、表現が難しいため発見が遅れることがあります。

隠れた不安症状を理解しよう

DSM-5の基準によれば、不安障害の診断には、症状が6か月以上続くことや、6つの症状のうち3つ以上が該当することが必要です。

しかし、以下のような症状が以前よりも明らかに見られる場合、不安障害の傾向がある、あるいは予備軍、グレーゾーンに該当するかもしれません。

不安をそのまま「不安です」と表現する人はわかりやすいですが、全員が不安をそのように自覚したり表現できるわけではありません。

多くの人は、自分が不安を感じていることに気づいていない場合が多いです。

今回は、隠れた不安を発見しやすくするために、よく見られる不安の表れ方について説明します。

隠れた不安症状の例

イライラしやすくなった

イライラする理由は「不安で落ち着かない」ことが原因の場合があります。

また、自分の期待通りに相手が動かないことへの不安から、イライラしやすくなることもあります。

攻撃的になった

イライラが募ると、他者に攻撃的になることがあります。

これは、自分の不安に向き合うことを避け、他者を支配することで安心感を得ようとする心理が働くためです。

相手に対して常に優位でいなければ不安を感じるため、マウントを取ることで精神的な安定を保とうとする場合もあります。

確認行為が増えた

不安を打ち消すために、何度も確認しなければ気が済まなくなることがあります。

よく見られる例としては、手を洗ったり、鍵をかけたかを繰り返し確認する行動が見られます。

これらの「儀式的な行動」を止めると、不安が増幅することが多いため、行為が日常的になると「強迫性障害」に発展する可能性があります。

仕事や決断が遅くなった

不安から、決断が遅れたり、先延ばしにすることがあります。

これは「他にもっと良い方法があるのではないか」という不安が原因です。

この場合、目標を小さく分割することで不安を軽減できます。

例えば、大きな目標ではなく、小さな目標を設定し、一つ一つ確認しながら進めることで、不安を減らすことが可能です。

決断が遅い人には「とりあえずの決断」と「小さな目標設定」が効果的です。

原因不明の身体症状が出てきた

不安を自覚していない場合、身体症状として現れることがあります。

めまい、頭痛、胸痛、しびれなどが見られ、医師の検査でも異常が見つからないことが多いです。

自分の気持ちを表現する習慣がない人や、自分に向き合うことを恐れる人によく見られます。

また、健康状態を過剰に心配し「重病かもしれない」「死ぬかもしれない」と不安になり、頻繁に病院で検査を受けることもあります。

薬・アルコール・過食・自傷行為などへの依存

不安から逃れるために、薬物やアルコール、過食、自傷行為に依存する人もいます。

特に薬物やアルコールは、不安やうつの症状を和らげるために使用されることがありますが、依存が進むと不安をより敏感に感じる体になってしまい、逆効果になることがあります。

まとめ

最後までお読みいただきありがとうございました。

今回の内容を参考にして頂き、あなたが不安障害の症状に該当する場合は、自力で治すのは難しいため、精神科や心療内科で適切な治療を受けることを強くお勧めします。

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