離婚寸前まで妻を追い詰めた夫が語る|モラハラ加害者体質をどう改善したか【後編】
この記事は、2024年11月に週刊文春オンラインで3回連載された私の体験談を要約・簡易版としてまとめたものです。
前編では、私がどのようにしてモラハラ加害者になってしまったかを詳述しました。
後編では、離婚危機から関係を修復し、加害者体質を改善していった具体的な過程をお伝えします。
当時の体験や心境を語る部分は言い切り調で、客観的な分析部分はですます調で記述しているため、文体が混在していますが、より生々しい体験をお伝えするための表現方法としてご理解ください。
また、妻目線での「離婚寸前から関係修復|私たち夫婦がモラハラを解決した被害者妻の道のり」も合わせて参考にして頂ければと思います。
この記事はこんな方におすすめです
- モラハラ被害者の方
- モラハラ加害者の方
- モラハラ加害者の更生が知りたい方
もくじ
- 改善への転換点|「俺は一体、何をしているんだ」
- 改善への第一歩|医療機関の受診
- 具体的な改善方法
- ①「マイルール」の発見と修正
- ②「感情日記」による自己理解の深化
- ③感情の言語化能力の向上
- 現在の状況と継続的な取り組み
- 母親から父親への復讐が始まった
- 毒親育ちでも、親を責めているだけでは現実は変わらない
- モラハラ改善相談の現実
- 改心のチャンスをくれた妻には感謝しかない
改善への転換点|「俺は一体、何をしているんだ」
妻から離婚を考えていると告白された1ヶ月後、ようやく自分の行動を客観視できるようになった。
それまでは「自分は頑張っている」「妻のためにやっている」という自己正当化ばかりで、妻の苦痛に目を向けることができなかった。
僕は「何のために身を粉にして頑張っていたのか」と自問した。
結婚当初は「妻を幸せにしたい」「妻に良い暮らしをさせたい」という一心だったのに、結果的に愛する妻を傷つけて、離婚寸前まで追い込んでしまった。
ここは何としてでも、「自分が改心しないといけない」「妻がくれた最後のチャンスを、絶対に無駄にしてはいけない」と思い、本気で自分の問題と向き合う決意をした。
この時から私は、”モラハラ加害者体質”である自分を変える努力を開始した。
改善への第一歩|医療機関の受診
まず、精神科を受診した。
うつ状態と診断されたため、まずは心身の回復に努めましょうとアドバイスされた。
さらに、発達障害のことを相談すると、ADHD(注意欠如・多動性障害)とASD(自閉スペクトラム症)の混合型と診断され、発達障害の治療薬であるストラテラ、睡眠導入剤が処方された。
体調回復への取り組み
- 抱え込んでいた仕事を減らす
- きっちり睡眠をとる
- 意識的に趣味の時間を設ける
これらに努めるうちに体調が回復し、アンガーマネジメントを学び、カウンセリングを受けることで、自身の怒りの根源を理解し、自分がキレてしまう仕組みが少しずつだがわかってきた。
具体的な改善方法
①「マイルール」の発見と修正
私がキレるのは、相手が自分の「〜すべき」という「マイルール」を破った時だった。
馬鹿にされたり、恥をかかされたりしたと感じると、裏切られたという気持ちに変換され、癇癪として怒りが出るということがわかった。
自分の「マイルール」を書き出してみた。
自分を縛る「マイルール」の事例
- 夫は妻を養うべきだ
- 男は甲斐性が必要
- 頑張らないといけない
他人を縛る「マイルール」の事例
- 妻は夫に感謝すべき
- 女性は控えめであるべき
- 妻は夫を立てるべき
- 仕事はプライベートより優先すべき
これらの「マイルール」の根源を分析すると、完全に父親と母親の影響だと気づいた。
「父は身を粉にして働いており、母も「うちの夫はよく働くし真面目で優秀」「男は甲斐性が必要」と言っており、そんな両親の影響を受けて、自分の「マイルール」が強固なものになっていったように思う。
しかし僕は父のように人一倍働くことはできず、頑張りすぎると妻に皺寄せがいったり、僕自身が倒れてしまったこともあった。
そこで、父の理想や「マイルール」通りにはなれない自分に折り合いをつけ、「自分は自分のペースで精一杯やればいい」と考え直していった。
無意識に自身の母親と妻を比較して、夫である自分を立てず、自分ばかり目立とうとするように見える妻に苛立ちを覚えていたのだった。
これは典型的な男尊女卑の思想だと今は分かるし、マザコン体質な自分を心底気持ち悪く感じるが、当時はそれが当たり前だと考えていた。
こうした「マイルール」の根源には、両親だけでなく、自分自身の人生の中で抱えてきた劣等感や自己肯定感の低さがあるということに気づき、自分が過去の嫌な経験を妻に投影していたことが分かると、少しずつ怒りの量も頻度も減っていった。
私は、妻に「妻」だけでなく、「母親」や「友だち」、「同僚」といった、妻以外の役割までも勝手に期待して、それを妻が完璧に担ってくれないと怒っていた。
そんな問題のある自分に気づき、葛藤し、ダメな自分を受け入れ、反省や対策を繰り返していくうちに、少しずつ「マイルール」を手放すことができていった。
それはすなわち、”モラハラ加害者体質”を変えることだった。
②「感情日記」による自己理解の深化
怒りの感情をコントロール出来れば、モラハラは抑えられると確信したため、ノートに日々「腹が立ったこと」「許せないこと」を書き出し、どのような状況でどんな喜怒哀楽の感情を感じるのか「本当はどうして欲しかったのか」など、本音を記録して、自己理解を深め、だんだん自分のキレるパターンを把握することが出来るようになっていった。
これは自分の取扱説明書を作る作業だった。
「感情日記」の具体的な書き方
- その日に感じた怒りや不快感を記録
- 具体的な状況と相手の行動を客観的に書く
- 自分がどんな感情を感じたかを詳細に記述
- 「本当はどうして欲しかったのか」本音を書く
- 後から読み返して、パターンを分析
「自己理解を深めることで、事前に対策を打てるようになり、イライラしやすい状況や環境を回避できるようになった。
また、自身の認知を理解することで、イライラする場面に直面しても、以前よりも怒りのゲージが上がらなくなっている。
私は、妻から「実はあなたとの離婚を考えていた」と言われてから約10年経過した現在も、どのような状況でどんな喜怒哀楽の感情を感じるのか「本当はどうして欲しかったのか」などを書き出す「感情日記」を今でも続けている。
これにより私は、1ヶ月に1度以上怒りの爆発があった頃に比べ、現在は6ヶ月に1度程度まで減らすことができた。
また、子どもの頃から苦手だった自身の感情を言語化する力も身につけていった。
怒ること自体をなくすことは難しいが、身体中を震わせるほどの強い怒りを感じていた以前に比べると、怒りの量や強さ自体も大幅に軽減できている。
③感情の言語化能力の向上
幼少期から「口答えするな」と父親に言われ続けた影響で、自分の気持ちを言葉にすることが極度に苦手だった。
この問題こそが「言わなくても察してくれよ」という一方的な期待につながり、モラハラの根本原因となっていた。
言語化訓練の具体的方法
- 要求の明文化: まず自分が相手に何を期待しているかを紙に書き出す
- 感情の言語化: 「嬉しい」「悲しい」だけでなく、より具体的な感情表現を学ぶ
- 理由の説明: なぜそう感じるのか、背景や理由も含めて表現する
- 建設的な提案: 批判や文句ではなく、解決策や代案を提示する
「感情日記」を続けることで、子どもの頃から苦手だった自身の感情を言語化する力を身につけていった。
これまで「言わなくても察してくれよ」と思っていたことを具体的に言葉にできるようになったことで、妻との関係は劇的に改善した。
現在の状況と継続的な取り組み
現在、私と妻は約10年前に「モラハラを相談できる場所がない」と感じたことから、2015年に「モラハラ解決相談所 リジェネ」を開設。現在まで加害者・被害者に関わらず、モラハラに関する悩みを解決に導いている。
この「モラハラ解決相談所 リジェネ」でも「感情日記」をつけるワークは導入されている。
自分自身に向き合う作業は地道で楽しいものではないが、加害者自身の”モラハラ体質”改善だけでなく、被害者であるパートナーに、加害者の”モラハラ体質”改善の努力を可視化できるという意味でも役立っている。
現在の夫婦関係: 現在でも妻とケンカすることはあるが、頻度は10分の1ほどに減った。
また、仮にケンカになっても怒りに囚われる時間は確実に短くなり、すぐに関係を修復できるようになった。
母親から父親への復讐が始まった
私の両親は現在、複雑な状況にある。父親の鉄工所が倒産した時、父親は60歳、母親は57歳だった。その後も父親は別の鉄工所に勤め、79歳になった現在も後継者育成役として働き続けている。
ところが母親は、父親の会社が倒産した時に、家計の足しにと始めた慣れないホテルのベッドメイクのパートに向かう際に自転車で転倒。
股関節にボルトを入れる手術をし、足が不自由になってしまってからは、家の中で酒を飲んで過ごすようになってしまっていた。
「父が帰宅すると、母はほぼ泥酔状態で、父が「酒ばかり飲むな」と叱ると逆上して、「あんたも昔は浴びる程飲んでいただろ! それで私に散々迷惑をかけてきた! だから、あんたに偉そうに言われる筋合いはない!」「うるさい! 黙れ! 今すぐ離婚してやる! 今すぐ、ここ(マンションの3階)から飛び降りてやる!」などと激しく反発する。
驚くことに、私が子どもの頃と、両親の立場が逆転している。
僕が結婚してから、母は酒が入ると過去に父がしてきたことを咎め始めるようになった。
でも僕は、父の鉄工所で働いた数年間で、父が糖尿病を患いながらも僕たち家族のために一生懸命働いてくれていたことを理解したので、今は父に対して恨みはない。
しかし私は、父が母に対して行っていたモラハラ行為を、無意識的にではあるが、妻に対して再現してしまった。
この原因は、自分の偏った結婚観や「マイルール」、さらに発達特性を言い訳にして、自身の感情の言語化を怠ったことであり、これらが重なった結果だと解釈している。
多くの人は育った家庭しか知らない。
そのために、新しい家庭を築けば、無意識的に育った家庭を再現しようとする。
その家庭が夫婦双方にとって過ごしやすく、違和感のないものであれば問題はないが、そうでない場合はすり合わせが必要となる。
その際に、どちらかだけが無理をして合わせようとしたり、無理やり「合わせろ」と強制すると、その家庭には依存やハラスメントが生じる。
私と妻の家庭がそうだった。
毒親育ちでも、親を責めているだけでは現実は変わらない
「最近では「毒親」や「親ガチャ失敗」という言葉が広まっているが、それによって「自分がモラハラ加害者や毒親になったのは全て親のせいだ」と、自分の生きづらさやモラハラ行為をすべて親の責任にする、いわゆる”他責思考”も広がっていると感じている。
確かに、自分の生きづらさの原因を探る過程で、毒親からのDVやモラハラが影響していることに気づくのは大切だが、自己の問題として向き合わない限り、現実は変わらない。
問題の原因に気づいたのであれば、いつまでも毒親に囚われているのではなく、今後、より良い”自分の人生”を築くために、「自分はどうしていくべきか」という問題解決の視点に切り替えることが必要だと思う。
モラハラ改善相談の現実
2015年に「モラハラ解決相談所 リジェネ」を開設した私は、これまで「モラハラを改善したい」という相談を何件も受けてきた。
だが、「パートナーに指摘されて来た」という人がほとんどで、「自ら気づいて来た」という人は1割程度しかいない。
おそらく自分のことも自分が育った家庭のことも、”疑いを持たないまま生きている人の方が一般的”だということだろう。
改心のチャンスをくれた妻には感謝しかない
モラハラ体質を、体の中から完全に消し去ることは出来ないと思います。
でも、本気で自分の問題と向き合うことで、衝動的な怒りは確実に軽減されます。
これは間違いありません。
今でも妻とケンカすることはありますが、頻度は10分の1ほどに減りました。
また、仮にケンカになっても、怒りに囚われる時間は確実に短くなり、すぐに関係を修復出来るようになりました。
こんな自分に改心するチャンスを与えてくれた妻には感謝しかありません。
あの時、自分の”モラハラ体質”に向き合わずにいたら、その後の人生も怒りの感情に振り回され続けて、結果的に妻も仕事も失い、人生のどん底から這い上がってこれていなかっただろうなと思います。
自分を変えられるかどうかは、自分の本気度と、自身の問題点を指摘してくれる人の存在、「あなたおかしいよ」とツッコんでくれる存在との関係性を構築できるかどうか、これが非常に大切であると感じます。
自分を変えられるのは自分だけ。
トラウマの連鎖を止められるのもまた、自分だけだ。
【週刊文春オンライン掲載記事】
- 第1回:12歳年下の女性からプロポーズされたが…「半年後、すでに離婚を考えた」心理カウンセラーの30代男性が”モラハラ加害者”になってしまうまで
- 第2回:12歳年下の妻に「思い通りに動いてくれよ」とモラハラを繰り返して…ついに離婚を突き付けられた夫が至った”意外な思考”
- 第3回:妻から「離婚を考えている」と告白された心理カウンセラーの夫が、モラハラを克服するまでにしたこと
加害者心理と更生過程の詳細については、上記の週刊文春オンライン記事をご覧ください。
【この記事を書いた人】
経験と専門性
- 夫婦でモラハラの問題を克服した専門家
- ASD・ADHDの混合型診断済み
- モラハラ加害者としての更生を実現
- 週刊文春オンライン3回連載で加害者心理と更生過程を完全公開
臨床経験(2010年〜)
カウンセラーとして幅広い支援経験
- 公的機関での生活保護・生活困窮者自立支援
- 福祉施設での精神疾患・発達障害者支援
- うつ病の方の復職支援
- 元受刑者・薬物依存者への更生支援
- ひとり親・DV被害者相談
- 企業内パワハラ相談
- 自助グループ・セミナー開催
メディア掲載実績
新聞・雑誌掲載
- 週刊文春オンライン(2024年11月 3記事連載)
- 産経新聞(2021年9月)
- 神戸新聞 まいどなニュース(2021年3月)
- 中日新聞 ねぇねぇちょっと特別編(2021年12月)
- ウレぴあ総研 ハピママ(2023年7月 3記事掲載)
テレビ・ラジオ出演
- NHK「ほっと関西」(2021年11月出演)
- KBS京都「笑福亭晃瓶のほっかほかラジオ」(2021年9月出演)
全国11媒体でモラハラ解決の専門家として紹介。
モラハラの問題で苦しんでおられる方々の少しでも力になりたいと思っています。
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前半の加害者更生の記事はコチラ
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